代表幹事ご挨拶


日本臨床補助人工心臓研究会(Japanese Association for Clinical Ventricular Assist System: JACVAS)を御紹介いたします。名称の通り、極めて重症な心不全に対して、今や確立した治療法となった人工心臓を適正に使用する技術や知識を普及させ、患者さんが日本中で広く治療が受けられることを目標にしています。そのために、医師、薬剤師、看護師、臨床工学技士などの教育・技術研修などを行い、わが国での補助人工心臓治療法の体制整備・インフラ整備に貢献している学術組織です。

現在、わが国には保険で使用が認められた6機種、体外装着タイプの国循ハート、植込型補助人工心臓のエヴァハート、デュラハート、ハートメイトⅡ、ジャービック2000と小児用人工心臓のエクスコア(ベルリンハート)があります。これらの補助人工心臓は年々利用数が増加しており、それを正確に追跡できるように医薬品医療機器総合機構(PMDA)と人工心臓関連企業及び関連学会が参画してJapanese Registry for Mechanically Assisted Circulatory Support (J-MACS)を設立しました。平成22年4月から登録を開始しており、現在まで約600人が人工心臓を装着して心臓移植を待機して来ました。

当JACVASは他学会との協力のもとに「補助人工心臓治療関連学会協議会」を結成し、植込型人工心臓装着手術とその管理を行える技術と知識を充分に持った施設を認定して参りました。現在、わが国では補助人工心臓の利用は心臓移植へのブリッジ使用(Bridge to Transplant: BTT)しか認められていませんが、心臓移植時には認定された9施設(平成28年3月時点)のいずれかに搬送する体制のもとに、補助人工心臓の手術と管理を行いうる施設を認定しており、現在、約42施設(平成28年3月時点)を認定しています。目標として、日本の全都道府県で可能になることを目指しています。これは将来、米国では広く行われている補助人工心臓の永久使用(Destination Therapy: DT) (心臓移植をしないで人工心臓で在宅生活してゆくもの)をわが国でも実施する時のために大変重要なインフラ整備になるでしょう。さらに、当研究会は関連する他学会との協力体制のもとに「人工心臓管理技術認定士」を教育、認定(試験制)しています。現在240名の技術認定士が補助人工心臓を適正に管理し、特に在宅の患者さんをサポートする体制のもと働いています。

先に述べましたが、わが国では補助人工心臓による重症心不全の治療は現在のところ、心臓移植への繋ぎ医療でありますが、将来は必ず永久使用としての生命維持装置になると考えられます。日本臨床補助人工心臓研究会は進歩し続けている人工心臓による治療をより安全で、長期間にわたり安心できるものとするための研究支援・普及事業に努力して参ります。御支援をお願い申し上げます。

平成28年4月